武田コロイドテクノ・コンサルティング株式会社

第19回 界面動電現象とゼータ電位

電解質水溶液等の液体媒質中に帯電したコロイド粒子を分散させる。この系に電場や重力場等の外場をかけると粒子が動く(粒子が固定されている場合は液体媒質が動く)。これが界面動電現象であり、粒子表面と液体媒質の界面にゼータ電位とよばれる電位が発生するために生じる。界面動電現象の研究はドイツ生まれのロシアの化学者ラウス(Ferdinand Friedrich von Reuss, 1778-1852) による電気泳動と電気浸透の発見に始まる。「ゼータ(ζ)電位」の命名はフロイントリッヒ(Herbert Max Finlay Freundlich, 1880-1941) による(1926)。表1に代表的な界面動電現象をまとめた。


表1 代表的な界面動電現象

代表的な界面動電現象である電気泳動を考えよう。液体媒質中を動く粒子に乗って周囲の液体の流れを眺めると、粒子表面で液体の流れの速度(粒子に対する液体の相対速度)がゼロになる。粒子表面から離れるにつれ流速が増大し、沖の方では粒子の速度(電気泳動速度)にマイナスをつけた量になる(図1)。


図1 粒子表面とすべり面

液体の相対速度がゼロになる面をすべり面と呼ぶ。ゼータ電位はすべり面の電位と定義される(すべり面はすべりが開始する面であり、面上では相対速度がゼロであることに注意)。粒子表面には一般に媒質分子の吸着層が形成される。したがって、すべり面は吸着分子層の厚さの分だけ真の表面より外側に位置する。したがって、ゼータ電位と表面電位は異なるが、近似的に両者は等しいとみなす場合が多い。

水中の粒子の場合、厳密には、「すべり面上で流速ゼロ」の条件(すべりなし条件)は水分子と表面の分子間の分子間力が強い親水性粒子に対してのみ正しい(粒子表面に水分子の吸着層ができる)。疎水性粒子の場合は分子間力が弱く、すべり面上で流体のすべりが生じる。この問題についてはいずれ詳しく述べたい。


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