武田コロイドテクノ・コンサルティング株式会社

第1回 コロイドの分散・凝集に対する2つの見方

液体媒質中に分散した多数のコロイド粒子からなる系では、粒子間引力のために粒子の凝集が起きる。この凝集過程に対して、全く異なる2つの理論がある。すなわち (1) Langmuir-Onsager理論と(2) DLVO(Derjaguin-Landau-Verwey-Overbeek)理論である。Langmuir-Onsager理論では、分散状態と凝集状態を互いに共存できる2つの安定な相とみなし、凝集過程を相転移つまり可逆過程と考える。一方、DLVO理論では、分散状態を厳密に熱力学的意味で安定と考えるのではなく、時間とともに最終的には必ず凝集する不安定な状態とみなす。すなわち、凝集過程を不安定な分散状態から安定な凝集状態への不可逆過程と捉えて速度論的に扱い、凝集する速度を評価する。つまり、DLVO理論における安定な分散系とは系の凝集速度がほとんどゼロとみなせるほどゆっくりした系を意味する。

歴史的には、これら2つの理論が競合した時代があったが、現在ではそれぞれの理論が対象とする粒子系が異なると考えられている。粒子が水中に分散している場合では、Langmuir-Onsager理論は、水溶性の高分子等の親水コロイド(媒質が水だけではなく一般の場合は親液コロイド)を対象にしている。一方、DLVO理論は金属粒子等の疎水コロイド(あるいは疎液コロイド)を対象にしている。実際、DLVO理論の文献[3, 4]のタイトルには、lyophobic sols(疎液ゾル)またはlyophobic colloids (疎液コロイド)と明記されている。なお、疎水(液)コロイドとは100%疎水(液)性の粒子を意味するのではなく、疎水(液)性の高い表面をもつ粒子を意味する。

《文献》
  • (1) Langmuir-Onsager理論
    • 1. Langmuir I (1938) The role of attractive and repulsive forces in the formation of tactoids, thixotropic gels, protein crystals and coacervates. J Chem Phys 6: 873-896.
    • 2. Onsager L (18) The effect of shape on the interaction of colloidal particles. Ann New York Acad Sci 627-659.
  • (2) DLVO理論
    • 3. Derjaguin BV, Landau DL (1941) Theory of the stability of strongly charged and of the adhesion of strongly charged particles in solutions of electrolytes. Acta Physicochim. USSR 14:633-662.
    • 4. Verwey EJW, Overbeek JThG (1948) Theory of the Stability of Lyophobic Colloids, Elsevier.